オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび592

養老静江「ひとりでは生きられない」を読む

 

著者は明治生まれ。横浜平沼高校がまだ神奈川県立第一高女だったり、東京女子医大が女子医専であったりした時代の学生生活を語っている。その後、帝大病院(今の東大病院)に小児科医として勤めるが、筆者は横浜本牧の友人宅で関東大震災を経験している。デマによる朝鮮人殺しや焼け野原になった横浜の様子を綴っている。

筆者のモットーは「好きなことをするー生きて行くとはそういうことだ」。事実よく言えば自由奔放、角度を変えれば「ただのわがまま」としか思えないような履歴を重ねていきます。しかし、女性の生き方や権利について偏見が蔓延していた時代に大したものだという気もします。

続いて再婚相手の養老さんと鎌倉の新居に移った当初のせりふ「自分の好きなことをやり遂げるとはいっても絶対一人では不可能なんだよ。当たり前じゃないですか」

やがて養老さんは筆者を置いて逝ってしまう。「僕は良い人間だから早く逝く。君はわがままな人間だから、なかなか死ぬことはできないよ。それを『業』というんだ」この言葉が的を得ていた証拠に筆者は94歳でこの本を書いている。

筆者の自分の気持ちを偽らない生き方は、とりわけ恋愛・男女仲について貫かられている。自由とは人と人の間ではなく、まず自分の気持ちがしがらみに巻き込まれないように保つことが大事だと語っている気がする。

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