オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび611

柳家花緑「落語家はなぜ噺を忘れないのか」を読む

 


タイトル通り、噺の覚え方・練り上げ方が書かれています。花緑さんのスタートはノートへの丸写し。18歳の頃志ん朝師匠に教わった「愛宕山」は語り口をそのままノートに写して読んでいたといいます。20歳になり小三治師匠に「船徳」を教わるのですが「俺は噺に小三治という装飾を施している」と言われます。自分なりに咀嚼して自分なりの演出をしてこそ、本当にその噺を身につけたことになる。

もともと噺は面白く作られている。古典落語であれば何百年も同じ噺が演じられ、今に残されてきたのですから。クラシック音楽やボクが教わった琵琶歌にも似たようなことは当てはまると思います。ウケねらいのギャグで笑いをとらなくても観客の心を掴む噺はできることを小三治師匠から教わったと書いています。表現の本質に迫る真実ですね。

落語家として辿る成長の過程を花緑さんは「守・破・離」と言い表している。師匠が教えた通りにやってみるが、伝統芸能の学び方だと思うのだけど、落語の自由度を芸人として独立していく過程をボクは感じました。

本書の最後の方で「お客さんを熱狂させる空間の再現」と熱く語ります。洋の東西を問わずどんな伝承芸能にもお客さんを熱狂させてきた歴史があるわけです。ジャンルは異なりますが、やはり伝承芸能に思いを寄せる者の一人として、大いに共感する者であります。

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