米山文明「声の呼吸法」を読む
以前米山先生の「声と日本人」を読んで、オヤジのあくびに投稿した気がします。(何だか記憶がごちゃごちゃしていますが・・)あとがきでは、その延長線上に本書を書きましたとおっしゃる。より実践的な方向に進展させて・・とのこと。ところが序章では、ヤツメウナギやピラルクが登場して、まず脊椎動物の呼吸の進化について、続いてヒトの話になっても胎児から新生児の呼吸に紙面を割いている。ちょっとまどろっこしい語り口な気がするのですが、呼吸や声に関する諸器官は、元々は何であったのか? 生まれてからどのように動き始めるのか? まずそのことを知っておくべきでしょう! という米山先生独特の論法なのだ。
本書では、身体の各部位で呼吸をどう感じるか? またそのためのエクササイズを紹介している。呼吸法というと腹式呼吸。横隔膜を下げて息を吸い、腹筋で呼気をコントロールするスキルに明け暮れしている合唱人は、大いに参考にすべきだと思う。
さらに様々な計器を駆使した「体内の温度変化と響きの関係」などの実験結果を紹介している。音圧と体壁振動に関係はなく「大きい声を出そうとすれば響くものではない」と結論付けています。
著者の研究はA=Atem(呼吸)、Tonus(医学的には緊張と訳するらしい)、Tonを結びつけるA・T・T方式にある。最後に野村萬斎さんが登場して、幼時に祖父から「背中に板を背負った感覚で声を前に出しなさい」と教えられたエピソードが出てくる。伝統芸能の中に、ATTとも繋がる発声のスキルが息づいていたのですね。