菊池清麿「評伝 服部良一」を読む3
朝ドラのタイトルにもなっている「ブギウギ」のリズムは、戦中上海に渡っていた服部良一が李香蘭のステージですでに使っていた。まるで戦後の音楽を預言するかのように。
そして笠置シヅ子がステージ狭しと踊り歌った「東京ブギウギ」。ボクはいわゆる「鉄」なのだけど、最近の電車は音が静かで揺れが少ないことに感心しています。特に車内で合唱団の楽譜を見たい時は、モーター音がないサハに乗る。東京ブギウギの楽想が思いついたのは、中央線の電車内で吊り革につかまっていた時だそうだ。車輪が線路の継ぎ目で奏でるリズムが名曲に変化していくのだから、いやはや大したものであります。ちなみに作詞者鈴木勝さんは、あの仏教学者鈴木大拙先生の息子さん!
「銀座のカンカン娘」「青い山脈」、藤山一郎に提供した名曲の数々。そして笠置シヅ子とは「買い物ブギ」などのブギシリーズ。数多くのヒット曲を飛ばします。
しかし、やがていわゆる歌謡曲とジャズをベースにした服部良一の音楽は乖離していく。服部メロディーの良さを受け継いでいったのは、歌謡曲とは一線を画していたロカビリー歌手たちであった。
国内での活躍が目立たない昭和30年代。その頃服部良一は、香港映画界で仕事をしていました。歌謡界のヒットメーカーから距離を置いた彼は、やがて恩師メッテルの教えに戻り、カンタータや交響詩の作曲に創作の軸足を移していくのだ。
最後に本書の著者菊池清麿氏についてふれたい。彼は本書の他に、藤山一郎・古賀政男・東海林太郎・中山晋平・佐藤千夜子・二村定一・阿部武雄・古関裕而について伝記を著している。音楽に対する凄まじいばかりの関心がなせる仕事であろう。