パトリック・ハンフリーズ著、野間けい子訳「ボール・サイモン」を読む2
サイモン&ガーファンクルが有名になったのは「サウンドオブサイレンス」から。それまでポール・サイモンはどこで何をしていたのか?その疑問に本書は答えてくれる。イギリスでフォーククラブを巡っていたのでした。ボクが大好きな「早く家に帰りたい」を書いたのもこの頃の話。この時期の成果は「ポール・サイモン ソングブック」としてレコード化されている。
ファンは憧れる歌手や作曲家を偶像化する。けれどそれは人間性までも尊敬に値するかどうかは別物なのだ。ベートーヴェンやモーツァルトがそうだったように、若かりしポール・サイモンのエピソードにもかなり自意識過剰で鼻持ちならない側面が浮かんでくる。この辺りも評伝を読む楽しさなのだろう。
S&Gが世界的に有名なデュオになり、映画「卒業」がヒットしてからの話は、どこかで聞いたことがあるようなエピソードが続く。でもリアルに体験していない世代にとっては得難い逸話なのだろう。
この評伝の中で繰り返し言及され、筆者が注目している作品がある。それは「ワントリックボニー」というボール・サイモン自身が脚本・主演、もちろん音楽を担当した映画だ。残念ながら私はこの映画を観ていないけど、主人公ジョナはまるでボール・サイモン自身であるかのようだと言う。この本が書かれる以前に実は彼自身が映像を通して、自伝を発信していたのですね。