異次元。今までに聴いたことがない音楽は、賞賛されるか?否定されるか?二者択一のリスクを背負っている。ベートーヴェンでさえ、ウィーンの一部市民からうるさがれていたし、今はすっかりスタンダードになっているビートルズでさえ、嫌悪の感情をむき出しにしていた大人が大勢いたことを、子ども心に私は覚えている。
しかし、音楽は今までにないものを生み出しながら発展してきたわけで、二十世紀の十二音技法を始めとする様々な試みだって、それまでになかった音響を創造する試みだったわけだ。評価は未だに様々な気がするけれど。
数十年の時を経ると、自然淘汰されてしまい、残るべくして残るものだけになっている気もする。しかし、あのマタイ受難曲がメンデルスゾーンの再演まで、眠っていたことを思えば、歴史の襞に挟まって、見えなくなっている遺産がまだまだあるかもしれない。
初演に接した人々により、作品が正当に評価されるのは、作品にとってこの上なく幸せなことなのだろう。昔も今も。