若松英輔「詩と出会う、詩と生きる」を読む2
本当に
そう思わなければ
祈りでは
なく
呟きなんだ 岩崎航
全ての思いを動員し、全集中した時に祈りが生まれる。そうか、うわべの言葉や音だけの歌では、何も通じないと改めて気づかされる。
深海に生きる魚族のやうに、
自らが燃えなければ何処にも光はない 明石海人
岩崎さんは、筋ジストロフィーを発病し、明石さんは戦前の治療法が確立されていない時代のハンセン病患者でした。病を抱えて生と向き合う姿は、正岡子規を想像させます。
乾かない
心であること
涙もまた
こころの
大地の潤いとなる 岩崎航
私は子どもの頃、大変な泣き虫で小学校高学年や中学生になっても些細なことで、大泣きしていた。ところが高校に入った頃からあまり泣かなくなった。外へと流れ出す涙や嗚咽を内側で循環させるスキル? をようやく獲得したのだろうか。
泣きたくなる。怒りたくなる。押し寄せる感情の波にもまれながら、私たちは生きている。そんな生を正面から岩崎さんは肯定してくれる気がします。