オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび48

名作を読む23

キングズリー作「水の子トム」を読む。

人間の想像力は、なかなかあなどれない。想像→創造によって、文明が進歩してきた部分は、たくさんあるだろう。子どもたち対象の漫画だって、鳥獣戯画からスタートしてありえない世界を描いてきた。お化けのQ太郎、ゲゲゲの鬼太郎etc…枚挙にいとまない。

水の子トムは、煙突掃除の少年が水の子になって冒険する話。青い鳥のチルチルとミチルが、不思議な国を旅するように、トムも奇想天外な旅をする。もちろん宗教的倫理的な下敷きが背景にあって、遠ざけたい価値観をことさら醜く描くことで、子どもたちを遠ざけようとしている。しかし

、どうもその価値観に差別意識や偏見が見え隠れしているので、最近では、以前ほど読まれていないようだ。19世記イギリスのインテリ作家の限界だったのかもしれない。

どうしたって、自分の宗教観、お国柄、成育歴は、作品に影を落としてしまうのだ。そもそも作者は牧師であったわけだし…。ある解説によれば、友だちであったダーウィン種の起源を応援していたともいう。二十一世紀の今、それが物語のどこのことやらわからないくらい、私たちの進化に対する考え方は変わってしまったということか。