オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび75

名作を読む42

ホーソン短編集を読む。

・人面の大岩

優れた人物の到来を待ち望む人々、その人物の顔は山肌の岩に似ていると語り継がれて来た。その伝説を信じるアーネストは、優れた人物が現れたと大騒ぎになるたびにがっかりさせられて来た。それは大金持ちでも軍人でも政治家でも詩人でもなかったのだ。そして、いつしかアーネスト自身が人々の尊敬を集め、大岩にそっくりな人物になっていたと言う話。

地味でも誠実に生きていくことに価値があるとする物語は、日本で言えば宮沢賢治の生き方に似ている気がする。

・やさしい少年

クェーカー教への偏見と無理解について、ある程度理解されていないと主人公のイルブラヒムや母親のカザリンが受けた迫害がよくわからない。何せ、神様と仏様を一緒に祀って神仏習合とか本地垂迹とか言ってのける国に、宗教を巡る対立やその事が原因である起きる戦争は、本当に分かりにくいのだ。

ただアンクル=トムの小屋では、黒人奴隷を救う人々として活躍していたクェーカー教徒が、このホーソン短編では一転して、悪魔のように語られるところが恐ろしい。宗教の陥る偏った見方が感じられた話でした。

・デイビッド・スーウォン

一人の青年が歩き疲れて、木陰で乗合馬車を待っている間、寝てしまう。その間に青年を養子にしようと考える老夫婦や青年に恋心を抱く娘や青年を殺して鐘を奪おうとする悪者などが次から次へと現れる。全ては青年が寝入っている間に起きたこと。人は自分の人生についてほんの一部しか知らないと語る冒頭の言葉が印象的です。

仰せの通り、何が起きるか?一寸先は闇なのです。今回のコロナウィルスだって、誰が今年の初めに世界中をこのような災禍が襲うことを予想できたでしょうか?でも、そうなってしまったら、それで覚悟を決めて、それなりに生き抜いていくしかないのが、私たちの人生なのでしょうね。