オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

苫野一徳 「教育の力」を読む

苫野一徳 「教育の力」を読む

教育を語る著作は、なべて未来を語り、子どもの幸せを願う著者の思いに溢れているが、本書もその傾向は強い。現代の公教育の置かれた時代的状況を語り、ポスト産業時代に必要な学力を「学び続けなければならない力」と説く。曰く「自由の相互承認」と「一般福祉」を前提にした教育のあり方を、対立にまみれてきた教育の論争の落とし所として提案する。
いろいろな読み方ができる本だが、19世紀後半から現代に至るまでの「新教育」思想の流れを掴むのには良い。引用文献として登場する教育思想家や教育学者が語ってきた内容は、そのまま近代教育思想史に置き換えられるだろう。(フレイレが登場しないけれど)また成長し続ける教員にとっては、個別化・協同化・プロジェクト化の学習改革の方向は、大いに参考になるだろう。
ただ、教育委員会改革により、政治動向と教育の世界がより連動しやすくなっている昨今、著者の言う新自由主義新保守主義の弊害を克服した教育が可能なのか?またそのような未来が開けるのか?現場に身を置く教員の一人として、そこまで楽観視できない自分が読後に存在していることも確かである。






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