オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび418

マルクス・ガブリエル他 斎藤幸平編「未来への大分岐」を読む3

 


相対主義は他者を非人間化する! と警鐘を鳴らす。自明の真実をねじ曲げ、他者他国と線を引く。自分は自分、他人は他人という思考が極端化して相互理解など吹き飛んでしまったところに、大きなトラブルが発生してしまう。

「世界は存在しない」というマルクス・ガブリエルの新実在論が紹介される。世界という何やら包括的な概念を用いて、その仕組みを解き明かそうと先人たちは努力して来たが、そんなものはないと言う。私たちは今も目の前に態度を合わせている事実があるだけでそれだけなのだと。それを意味の場と呼んでいる。そして事実とは自分の意識から独立した外側にあるのではなく、自分の内側にもあると考えるのが、従来の実在論との違いらしい。つまり非可視的な人権や道徳も事実だと。

こうして事実を見定めながら、しかも事実=真実にはならないのだと説く。ここが相対主義を乗り越える立ち位置。対談が進む中でマルクス・ガブリエルが倫理を重要視していることが炙り出されてくる。そこっすか! とも感じるが、現在の無節操な状況を克服するために必要な態度なのかもしれない。この延長に哲学教育への期待があり、AIによる人間の管理・独裁から我々自身を守る判断ができると展望する。

最後の方で、民主主義の普遍性は国民国家とは相容れない、だからこそ難民が富める国を目指すのだと。なるほど、けれどそれを乗り越えるための国連や国際機関が何と苦労していることか! 丸山眞男が昔、永久革命としての民主主義と言っていたけれど、道は果てしない。