オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび574

菅野恵理子「MIT音楽の授業」を読む

 


音楽学科の開講科目は「文化・歴史」「作曲・理論」「音楽テクノロジー」「演奏演技(パフォーマンス)」の領域に分かれている。目を引くのは「文化・歴史」の領域に「ビートルズ」「ワールドミュージック入門」「アフリカの音楽」などの授業があること。伝統的な西洋中心の音楽史にとらわれていないのだ。

ワールドミュージック」の授業では、パーソナル・ミュージック・エスノグラフィー」を書く課題からスタートする。自分の立ち位置や歴史を知るのだ。同じ課題を日本の学生に課すとしたら、地域特性がどのくらい反映されるだろう? 伝統邦楽まで深入りしなくていいが、昭和歌謡が過去の文化となった今、これが日本の音です、音楽です! と胸を張れる音があるのだろうか?

ビートルズ」と「西洋音楽史」の担当教授が共通していることも興味深い。彼らの音楽に西洋音楽の伝統に根差している部分があることを明らかにしていくのだ。

私たちは、日常何かメロディーの断片を思い出して、けれどそれが何の曲だったか? わからない時があります。いかにもMITならではですが、膨大なアーカイブデータの集積に検索をかけて、それが何の曲であったかを探すことができるという。特に中世音楽では楽譜の断片しか残されていない場合があり、その修復再現に有効だと言う。

本書は、後半から科学技術者を育てるMITで右脳を働かせる音楽授業の大切さを語り始める。これは左脳を最大限に機能させることを目標としてきた近代教育=明治以降西洋に追いつき追い越せで走ってきた日本を含めた西洋型教育への警鐘と言えるかもしれない。しかし、日本は古来から豊かな感性を大切にしてきたお国柄であり、右脳も十分に働かせてきたのだ。和魂洋才ではないが、改めて日本人が培ってきた文化に目を向けてみようと思いました。

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