大野元裕「今の中東がわかる本」を読む
今や世界中の脅威と言ってよい「イスラーム国」。なぜあの様な無法がまかり通る「国?」が存在できるのか?まったく理解に苦しむ。そもそも、中東から伝わるニュースからは、いつも混乱に満ちた状態が続いているように見えてしまうが、それを本当に鵜呑みにしてよいのか?イスラエルを巡る戦争、イランイラク戦争、湾岸戦争、9・11同時多発テロ、アフガン戦争、イラク戦争と、ここ数十年戦争に明け暮れしているように思えるこの地域の実態を私はどこまで理解できているのだろうか?そんな思いがあって読み始めた本です。
読み始めてしばらくすると気づくことは、筆者が超大国アメリカやヨーロッパの価値観と適当な距離を置きながら、イスラームについて語っていることだ。グローバル化と言いながら、実質は、アメリカ的ヨーロッパ的な価値観が地球上を席巻し、その立ち位置にいなければならないかのような強迫観念さえ感じる状態については、以前から気になっていた。根本に精神文化がアメリカやヨーロッパと異なる根っこをもつ日本などは、「何もできそこまでして尻尾を振りながら従順になることもあるまいに」とさえ思っていた。
宗教、部族、政治、経済、様々な視点からスポットを当てて筆者は日本人が誤解している中東に対する偏見を解きほぐそうとする。そして、解きほぐされた実態から見えるのは、不満を抱えた民衆と過激な行動に走る若者を止めることができない統治機構である。そこには日々の数分のニュースからは読み取れない複雑な事情が背景に横たわっていたのだ。
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