オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび230

アルノ・グリューン「人はなぜ憎しみを抱くのか」を読む3

 

本書の後半で、作者は憎しみに対する罰について語る。許さないときっぱり言うことと罰を与えることは違うのだと。断固とした態度を取ることで、自分自身の姿に気づくきっかけになると作者は言う。

例えば仮想敵をつくることで、人々を分断を助長し、憎しみを煽るリーダーがいるが、彼らの手のひらの上にいては、自分自身のあるべき本当の姿に気づけない。ロシア軍の捕虜を殺すように命じられたドイツ兵の話が出てくる。ドイツ兵は目の前にいるロシア兵に自分と同じ姿を見て、殺せなくなると言うエピソードだ。憎しみの呪縛から逃れるために、他者への共感が必要であると言う例なのだが。

本書は、憎しみの源泉を幼児期の親との関係から掘り起こそうとしている。そして、自分の中にはもう一人の内なる他人がいるのだと。ともすれば外面的な評価(=見てくれや体裁)にばかり気を取られがちな私たちにもう一度内面を見つめ直してみようと呼びかけてくれている。今更それでどうなるのか? 何の役に立つのかわからない! と感じる人も多いだろう。けれど私たちが気づかないうちに見失い、または操られている感情に、目を向けてみるのは、ある意味の自己発見になり得ると思うのです。